2024年に開業した「イマーシブ・フォート東京」が、わずか2年で閉業を発表しました。
一方、沖縄に誕生した大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」も閑古鳥が鳴く状況が続き、集客に苦戦しています。
どちらもUSJをV字回復させたカリスマ・森岡毅さんが率いる「刀」が関わっていて、期待のプロジェクトでしたが、現実は厳しいものでした。
なぜこのような結果に至ったのか、2つの事例に共通する“マーケティング戦略の落とし穴”を深掘りしていきます。
- イマーシブ・フォート東京とジャングリア沖縄の共通した失敗要因
- 少人数没入体験の限界とマーケティング戦略のズレ
- 森岡毅氏と「刀」のブランド再構築に必要な視点
失敗の核心は「少人数向け体験」偏重と施設設計のズレ
どちらの施設にも共通していたのは、「没入体験」を売りにした少人数向けの体験コンテンツに大きく依存していた点です。
この戦略は特定の層には強く刺さる一方で、集客と回転率を重視するテーマパークビジネスとは相性が悪いものでした。
特化しすぎた体験設計が、かえって事業全体の足を引っ張る結果になったのです。
広大な敷地とディープ体験のミスマッチが招いた悲劇
「ジャングリア沖縄」は約60ヘクタールという広大な土地に、熱帯雨林や冒険テーマのアトラクションを展開しました。
しかし、その中心にある体験はどれも、スタッフ主導のガイド付きツアーや、順番待ちのある体験型アトラクションでした。
このような仕組みでは、広大な敷地を生かしきれず、高コストの維持管理と低回転率というダブルパンチに陥ります。
体験の深さばかりを追求した結果、「滞在時間が長い=収益性が高い」にはならなかったという現実が露呈しました。
ライト層向けの体験不足が収益性に直撃
「イマーシブ・フォート東京」は、演劇型のインタラクティブ体験を売りにしていました。
キャストと1対1、もしくは少人数で展開される体験は熱狂的なファンを生んだものの、一般層や家族連れには「分かりにくい」「気軽に楽しめない」という声も多くありました。
加えて、フリーパスが使えないチケット制度や、事前予約制の多さが、来園ハードルを高めてしまいました。
結果的に、「気軽に何度も来たくなる」仕組みが作れず、リピーター獲得が難しくなったことが、短期間での閉業につながったと考えられます。
このように、深さを求めすぎた体験設計が、幅広い客層の取り込みを阻害したことが、両施設の大きな共通点と言えるでしょう。
イマーシブ・フォート東京がわずか2年で閉業に至った理由
2024年春に開業した「イマーシブ・フォート東京」は、華々しいスタートを切ったものの、2025年末には閉業を発表しました。
その背景には、運営方針の迷走とビジネスモデルの不安定さが色濃く表れています。
本項では、同施設がわずか2年で失速した要因について、2つの側面から解き明かしていきます。
フリーパス廃止と運営方針の迷走
オープン当初、イマーシブ・フォート東京は“1日中遊び尽くせる”ことを売りにしたフリーパス制を導入していました。
しかし、2025年春にはその制度が突如廃止され、体験ごとのチケット制に移行しました。
これにより、訪れるたびに異なるチケットを購入する必要があり、来園者から「複雑で分かりにくい」といった不満が続出しました。
また、施設内の一部エリアでは事前予約制の導入や人数制限が実施され、自由な回遊性が損なわれる結果に。
このように、料金制度と運営方針の一貫性の欠如が、来場者離れを加速させたと考えられます。
「演劇没入型」テーマの市場との乖離
同施設は、海外で注目を集めている「イマーシブ・シアター」型の演出を取り入れた、日本では珍しい没入型のテーマパークでした。
しかしながら、その魅力を最大限に体験できるのは、ある程度の演劇リテラシーを持った一部のマニア層に限られていました。
「俳優と1対1で会話する」「物語の一員になる」といった設計は、一般のライトユーザーにとってはハードルが高く、入り込みづらいものでした。
特に家族連れや海外観光客にとっては、直感的に楽しめるアトラクションの少なさがネックとなり、満足度を得にくい構造だったのです。
結果として、「リピーターになりにくい」「誰かを誘いにくい」施設になってしまい、自走する集客モデルの構築に失敗したと言えます。
つまり、イマーシブ・フォート東京の閉業は、マーケティングと体験設計が“狭すぎたターゲット”に最適化されすぎたことが一因だったのです。
ジャングリア沖縄が期待外れに終わった3つの要因
USJ復活の立役者・森岡毅さんが手がけた沖縄の大型テーマパーク「ジャングリア」は、開業当初から大きな注目を集めました。
しかし実際には、期待を大きく下回る集客となり、運営側も苦戦を強いられています。
ここでは、3つの主要な要因に絞って、その失速の本質を見ていきます。
⇒ ジャングリア沖縄がガラガラな本当の理由は?4ヶ月で閑散となった原因と課題を徹底解説
想定外の低集客とオペレーションミス
ジャングリア沖縄は開業時、「年間250万人の来場者」を目標に掲げていましたが、実際の初動はそれを大きく下回るものでした。
その原因の一つが、アクセスの悪さです。
沖縄本島北部・名護市からも距離がある立地であり、車での来場が前提という制約が観光客にとって高いハードルとなりました。
さらに、現地では駐車場の不足や入園時の待機導線の混乱など、オペレーション上の不手際も報告されています。
このようなスタート時の混乱が、SNSでのネガティブ拡散を誘発し、イメージダウンを加速させたと考えられます。
「沖縄らしさ」の欠如と高価格帯の壁
沖縄という観光地の特性を考えると、「自然との共存」や「ローカル文化の体験」が強く求められます。
しかし、ジャングリアのコンセプトは熱帯ジャングルを模した“異世界”型であり、現地の文化や風土との結びつきが極めて希薄でした。
これにより、沖縄旅行の延長で訪れる動機づけが弱く、観光客の目的地として選ばれにくくなってしまいました。
さらに、入園料やアクティビティ料金も本州のテーマパーク並みに高く設定されていて、「価格に見合う体験が得られなかった」とする口コミも少なくありません。
この価格と体験価値のバランスの悪さが、リピーターの定着を妨げる要因となりました。
つまり、ジャングリア沖縄の苦戦は、戦略・立地・演出・価格設定という複数の要素が噛み合わなかった結果であると言えます。
マーケター森岡毅のブランドイメージと現在の評価
USJのV字回復を成し遂げたマーケター・森岡毅さんは、一躍“日本一のマーケター”として名を馳せました。
しかし、近年の「イマーシブ・フォート東京」や「ジャングリア沖縄」での苦戦により、その評価に変化が見え始めています。
本章では、森岡毅さんのキャリアを振り返りつつ、現在のマーケティング業界における立ち位置を考察していきます。
USJ成功の栄光とその後の苦戦
森岡毅さんが脚光を浴びたのは、USJを家族向けから「大人が楽しめる刺激的な場所」へと大胆に転換させたことがきっかけでした。
ハリーポッターエリアの導入や季節イベントの強化など、戦略的なブランド再構築が功を奏し、年間入場者数は飛躍的に増加。
当時は「需要を科学で予測する男」として、定量分析に基づくマーケティングの模範と見なされていました。
しかしその後、自身が立ち上げた戦略会社「刀」が主導したテーマパーク案件では、想定通りの成果が出ないケースが続出しています。
そのギャップが、現在の評価に陰りをもたらしているのです。
「稀代のマーケター」から「見直しの時代」へ
かつては「ブランド再生の魔術師」と称賛された森岡毅さんですが、ここに来て業界内外からの見方も変化してきました。
特に、実行フェーズでの失敗や現場との乖離が、マーケターとしての課題として指摘されています。
構想段階では華々しいビジョンを描く一方で、実際の来場者動向や地域特性とのミスマッチが顕著だったのは否めません。
このような失敗が続くと、「データドリブンの限界」や「机上の空論」といった批判も一部で聞かれるようになります。
つまり現在は、森岡毅さんにとっても「成功体験のアップデート」が求められる転換期にあると言えるでしょう。
今後の再起は可能か?刀と森岡毅のマーケティングの今後
「USJを復活させた男」として名を馳せた森岡毅さんと、その率いる戦略集団「刀」。
しかしここにきて、複数プロジェクトの不振により、その手腕やモデルに再評価の波が押し寄せています。
とはいえ、刀の今後には再起の可能性も十分に残されています。
戦略の再構築と現場視点の再強化がカギ
これまで刀が得意としてきたのは、データ分析とブランドコンセプトの立案でした。
しかし、現場オペレーションやユーザー体験の設計では、実行フェーズでの弱さが露呈しています。
今後の成長に必要なのは、“現場から逆算するマーケティング”への転換です。
来場者の実感値や現地スタッフのフィードバックを積極的に取り入れ、リアルな顧客体験と数値戦略を統合するアプローチが求められます。
この変化が、刀ブランドの再評価につながる転機となるでしょう。
官民ファンド投入の重責と事業継続のリスク
「ジャングリア沖縄」には官民ファンドが投入されていて、公的資金による事業支援が進められています。
このことは一方で、プロジェクトの継続性と成果への責任が格段に重くなることも意味します。
期待値が高まる中で結果が出なければ、刀というブランド自体の信用リスクにも直結しかねません。
今後は、マーケティング戦略だけでなく、財務・運営・地域共創の視点を含めた総合的なマネジメント力が不可欠です。
社会的責任と事業成功を両立できるかが、刀にとって最大の試練となるでしょう。
イマーシブ・フォート東京とジャングリア沖縄の現状から読み解くマーケティング戦略のまとめ
今回取り上げた2つの大型プロジェクト──「イマーシブ・フォート東京」と「ジャングリア沖縄」。
いずれも期待と話題性に満ちたスタートを切ったものの、現実は厳しいものでした。
この失敗には共通するマーケティング上の問題があり、そこから見えてくる教訓は非常に示唆に富んでいます。
まず重要なのは、ターゲット選定の精度と広がりです。
両施設ともに、強い没入体験や非日常性を追求するあまり、コアファンには響いても、ライト層や一般客に届きにくい設計となっていました。
また、価格設定や体験導線など「現場の使いやすさ」に対する配慮が薄く、体験価値と費用感のバランスに不満が出やすい構造だったと言えます。
次に見落としてはならないのが、地域性や立地との親和性です。
沖縄という観光地におけるテーマパークの在り方や、都市型没入施設に求められる柔軟性など、“場所に適した戦略”の欠如が両者に共通しています。
マーケティングは「良い商品を作る」こと以上に、「その商品がどこで・誰に・どう響くか」を設計することが本質なのです。
そして最後に、成功体験の陳腐化に気づき、柔軟に見直す力も重要です。
過去の成功事例に固執せず、現場と市場の“今”に即した仮説検証と改善を重ねていく──。
それこそが、ポストUSJ時代のマーケターに問われている能力ではないかと思います。
USJをV字回復させたように、ジャングリアも軌道に乗れば良いですね!
- 没入体験型テーマパークの共通する失敗要因を分析
- 収益性の低い少人数体験と広大な敷地のミスマッチ
- ライト層への訴求不足と複雑な料金設計が課題
- 「沖縄らしさ」の欠如と高価格設定が集客に逆風
- 森岡毅氏の成功体験が現場にフィットしなかった
- 実行フェーズでの現場乖離がブランド評価を左右
- 再起には現場視点と戦略柔軟性の両立が鍵
- 場所やターゲットに最適化された戦略設計の重要性
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